家庭の教育力が低下しているという議論がありますが、これは正しくありません。昔の家庭が今より教育力が高かったとは到底思えません。「子育てのハードルが上がっている」と捉える方が良いと考えます。子どもは環境の中で育ちます。その環境が激変しています。地域で子どもが集団遊びをしている姿を見かけなくなりました。自分がやりたいと思うことをやりたいと思う方法で心ゆくまで遊ぶことはありません。道具を自分で作ったり工夫して遊んだりすることもめっきり減りました。圧倒的な体験不足が今の子どもの大きな課題です。かつては、家庭や地域で自然に身についていた力が、今は意図的な指導を通さないと育たなくなっているわけです。子育てが難しくなった所以です。

例を1つあげます。幼稚園の指導要領では「折り合いをつける力」の育成が重要課題とされています。かつては家庭内で「チャンネル争い」というものがありました。家庭にテレビが1台しかなかった時代には、茶の間でみんなでテレビを見るときには、番組を1つに決める必要がありました。見たい番組があっても、我慢しなければいけないことが普通でした。「今日は我慢するけど、来週はぼくに選ばさせて」これが折り合いをつける、です。自分の意見をしっかり主張はするが、場合によっては我慢する力です。そういう経験を積みながら、折り合いをつける力を獲得していたわけです。家庭にテレビが複数あると折り合いをつける必要がなくなります。そんな環境で育っている子どもには、意図的に指導していかなければならないのです。

最近「非認知能力」が脚光をあびています。多くの研究結果から「人を成功に導く重要な力」と認められるようになりました。非認知能力は「自尊心」「やりぬく力」「自制心」「勤勉性」「社交性」「思いやり」「意欲」「信頼」・・・といったような数値に表しにくい能力です。受験では測らない能力です。しかし、最近の研究結果から非認知能力は「学力」への影響があるだけでなく、幸せな人生そのものに影響すると考えられるようになりました。子どもの周囲を見渡して、楽しく遊ばせてくれるものはふんだんにありますが、非認知能力を高めるような体験ができる場は大変少ないです。スポーツ少年団で心身を鍛えるのもいい体験だと思います。しかし、大人の助けを借りながら、自分たちが企画して活動する子ども会活動は、最適な場であると言えます。だから、「今こそ子ども会」なのです。

「受験があるので、子ども会をやめさせようか」という考えは理解できます。しかし、「長い目で見ると大切な子どもの育ちを阻害しているのではないか」と悩んでみてください。子どもを取り巻く大人たちの考えもまた、子どもの育ちに関わる「環境」であり、子どもの育ちの鍵を握っているわけですから。